東基連会報‗編集後記【令和元年7月号】


ユニセフが6月13日付けで発表した日本など41カ国の政府による2016年時点の子育て支援策に関する報告書によれば、日本は給付金など支給制度を持ち、出産休暇・育児休業期間の長さなど男性の制度で1位の評価を得たが、「実際に取得する父親が非常に少ない」との特異性とともに、日本男性の取得促進には「社会的に受け入れられるようになることが必要だが変化には時間がかかる」と指摘。日本の男性が育休を取得しない理由として①職場の人手不足②育休を取得しづらい社内の雰囲気などを挙げていることも耳が痛い。「子どもたちの脳の発達にとって、ひいては彼らの将来にとって、人生の最初の時期より重要な時期はありません」とはユニセフ事務局長ヘンリエッタ・フォア氏の言。EU議会は本年4月、両親それぞれに認められていた育休4カ月のうち、2カ月の所得補償も義務づけることを賛成多数で可決したとのこと。彼我の差を思わずにはいられない。「父の日」が「母の日」より疎んじられる昨今、将来「ぬれ落ち葉」などと揶揄されないためにも、社会全体が男性の育児参加に向けて奮起すべき時が来たのではないか。
(紅葉マーク)

東基連会報‗編集後記【令和元年6月号】

祝賀ムードの中で元号が「平成」から「令和」に改められた。上皇は天皇退位を目前に控えた4月23日、退位に関連した儀式の一つである「昭和天皇山陵に親謁の儀」を終えられた後、産業災害により殉職されたかたがたを慰霊するため建立された「高尾みころも堂」を皇后と共に訪問され、26万人余の御霊を祭る拝殿で供花されたとのこと。両陛下は皇太子ご夫妻時代からこれまでに6回訪問されているとのことであり、戦地への慰霊、地震などの被災地に慰問に行かれたのと同様、労働災害で亡くなられた方々への気遣いを忘れず、人の命を大切にするお心をありがたく思う。供花の後、労働災害による死亡者数の推移の説明を受け「ずいぶん少なくなりましたね」と感想を述べられ、死亡者数を減らすには「どういう努力が必要ですか」と質問されたとのこと。説明に当たった方がどのような回答をしたのかは、残念ながら報道されていないが、皆さんはこの御下問にどうこたえるだろうか。6月は全国安全週間の準備期間である。各社とも安全大会をはじめとして、様々な取組が行われることと思うが、陛下の御下問への答えを見出す努力もまた全国安全週間の意義であることを再確認できればと思う。
(案山子)

東基連会報‗編集後記【平成31年5月号】

最近は、少しまとまった文章を書ける人がいなくなってきたと思うのは、私一人ではないのだと思う。周りを見ればスマホにかじりつき、わずか数行のSNSに周囲への配慮もなく熱中する。米国大統領にして140字のツイッター頼りとなれば宜なるかなとも思う。私が中学・高校生だったころの学習雑誌などには、必ず「文通コーナー」があり、手紙を通して情報交換や交際の相手を求めたもの。言葉を吟味し、言い回しを推敲して思いを込め、返事を心待ちにする楽しみは今の若い人にはなくなってしまったのだろうか。森山良子のデビュー作「この広い野原いっぱい」では「この広い世界中の何もかも 一つ残らずあなたにあげる だから私に手紙を書いて」とある。手紙は廃れ、歌は残ったといったところか。思いを寄せる文通相手から届いた別離の手紙に彼我の遠きを恨めしく思った青春時代の記憶を辿るとき、「文通」も「恋文」も今や死語となり、「思いやり」の心も失せたように思う。元凶は本を読まなくなったことにあるのか。一字一句、心血を注いで綴った文章を通読。その後、解説を載せた文学雑誌を読み、さらに精読するなどは、今時、よほどの文学好きでなければしないのだろう。街の書店は次々と閉じられ、本屋に足を運び、気の向くまま拾い読みをする楽しみもなくなってしまった。もう一度若き頃に読んだ本を書棚に探すことにしたい。
(伝書鳩)

東基連会報‗編集後記【平成31年4月号】

東京労働局では、今会報「行政の窓から」にあるように、これから社会に出て働く若者が、労働契約法や労働基準法など働くルールの理解を深めることを目的に、大学や高校、専門学校で行うセミナーや講義に職員を派遣し、機会均等・キャリア教育の充実を図る活動を展開している。
一方3月に入り就職活動が本格化し、各地で会社説明会が開催されている。ニュース情報では、最近の就活は様変わりしてきているらしい。入社試験や面接での出題傾向が変わったという。例えば「東京オリンピック・パラリンピックでの開催は、社会や経済にどのような影響や課題があるか、あなたの考えを述べてください」えっ!正解は?今就活の現場ではこのように、“正解の無い時事問題”で学生に単なる知識を求めるのではなく、本人の考えや資質を測ろうとする企業が増えているという。情報が簡単に手に入り、AIで素早く処理できるようになってきている昨今、人間にはこれまで以上に“正解の無い課題”について考える力が求められている。
2019年に卒業予定の学生から募集した「就活川柳」最優秀賞は、「不合格 心もSuicaもチャージ切れ」定期外の区間へと何度も足を運び、会社の説明会や面接に何回も参加してから不合格の通知をもらうと、心にもSuicaにもチャージがなくなり萎えてしまうのだろう。売り手市場とはいえ、社会の変化に対応する若者にエールを送りたい。

4月に入り、一目で新入社員とわかる若者の姿を多く見かけるようになった。いわゆる就活の開始時期を巡っては、昨年、様々な議論があったが、(株)ディスコが本年2月に発表した「2020年卒・新卒採用に関する企業調査―採用方針調査」結果によれば、2020年3月卒業予定者の採用見込みは、前年よりも「増加」(28.0%)、「減少」(7.9%)となり、9年連続で「増加」が「減少」を上回り、採用活動のスタンスは、「学生の質より人数の確保を優先」が25.2%と、今年も4社に1社が「質より量」を優先するとのこと。先の議論が何を目的にしたものか、透けて見える、といっては言い過ぎか。1978年、オイルショック後の就職氷河期に就職した我が身に照らせば隔世の感がある。新入社員の教育はこれからが本番。「質より量」に走って採用した人材は玉石混淆だろう。採用に当たった担当者の目が確かかも問われるが、人が持つ隠れた才能を見出し、企業が必要とする人材に育て上げる技量もまた試される。才能はすぐに開花するとも限らない。採用者の「量」を確保するためのコストやエネルギーより、人を育てることの方が、それぞれの新入社員の人生そのものを左右することを考えれば、遙かに慎重であるべきだし、高いコストやエネルギーを要すると考えるのは、筆者だけではないだろう。評価の定まった在職社員の人事異動もこの時期。新たな業務に就く方も、新たな任地に赴く方も、幸い多き門出になることを祈ってやまない。
(鬼軍曹)

東基連会報‗編集後記【平成31年3月号】

旧聞になるが、昨年12月3日、「新語・流行語大賞 トップ10」が発表され、NHK番組「チコちゃんに叱られる!」のチコちゃんのきめ台詞「ボーっと生きてんじゃねーよ!」が入選した。子供から大人に発せられることを前提にしているが、この番組を見たことがない故に返ってそう感じるのか、職場の上司などからこの言葉を投げかけられたらどのように思うかが気に掛かった。大賞の発表を追うように、12月14日に開催された労働政策審議会において、職場のパワーハラスメントの防止対策について、雇用管理上の措置を講じることを法律で義務付けることやその定義、事業主が講ずべき措置の具体的内容等を示す指針を策定することが適当であるとの内容の報告書案が審議された。職場のパワーハラスメントの定義については、
ⅰ) 優越的な関係に基づく
ⅱ) 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
ⅲ) 労働者の就業環境を害すること(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)
の3つの要素を満たすものとされている。「文字」が「ことば」になるとき、たとえそれが流行語であっても、発言の意図が相手を中傷することを目的とするものであれば「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」と言えないか。ただ、発言の「意図」を第三者が見抜くのは至難の業。子供番組の流行言葉とはいえ、異常乾燥状態の職場への恵みの雨とは程遠いのでは。
(伝書鳩)

東基連会報‗編集後記【平成31年2月号】

消費税率引き上げに伴ってキャッシュレス化も、とは財務省の目論見?IT化の進展からすれば、キャッシュレス化後進国にわが国で当然の成り行きかもしれないが、看板娘?との束の間の逢瀬を奪われると思うのは年寄りのひがみか。ともあれ、コミュニケーションの希薄化が進んでいると感じるのは筆者一人ではないだろう。京都大学総長で霊長類学者でもある山極寿一氏曰く「人間は常につながりを求め進化して来た。信頼や期待を受け、自分と他者が世界を共有し生きるのが人間であり、人の定義はそこに行き着く。」と。コミュニケーションといえば「飲み会」と言われて育った世代としては、その場もやや影が薄くなった感があるが、1次会の費用は会社もち、ただし、お店で一緒になった社員は部署を問はず杯を交わすことなどのルールを決めて復活するなどの兆しもあると仄聞する。時間的・精神的な負担、懐具合との兼ね合いもあるが、健康上の問題や翌日の仕事の効率にも響くことなど、コミュニケーションの場としての「飲み会」を復活させるには多面的な配慮が必要だろう。「朝方勤務」など、働き方改革で先陣を切り、話題の多い伊藤忠商事。同社の「働き方改革」を紹介するホームページで垣見俊之人事・総務部長は「社内の飲み会は1次会のみ10時までを徹底しています。」と「110運動」の取組を説く。良好な人間関係の構築を「働き方改革」の礎とするのならば、改革は一朝にしてならずか。
(馬酔木)

東基連会報‗編集後記【平成31年1月号】

お屠蘇の抜けきらぬ頭で今年はどんな年になるかとツラツラ考える。昨年成立した「働き方改革関連法」が4月1日から順次施行になる。関連法の遵守に向けた取組はどれも悩ましいが、規模を問わず4月1日から施行される有給休暇の付与は、取得促進に向けた取組がなされていなかっただけに難問。罰則付き時間外労働の上限規制も、中小企業には1年の猶予があるとはいえ、どの様にして規制の範囲に落とし込むかは自社の力だけでは及ばず。5年の猶予となった特例業種も、自動車運転の業務では現行通達での許容範囲が大幅に狭められ、医師についても「医師の働き方改革に関する検討会」で議論の最中で見通しがきかない。職場のパワーハラスメント防止対策も喫緊の課題であり、検討会の報告書を受け、審議会に議論の場を移す。関連法には盛り込まれていないものの、働き方改革の施策に上げられた「治療と職業生活の両立」は有為な人材確保に必須。「兼業・副業」における労働時間管理、「勤務間インターバル制度」の普及・促進。そして、関連法からは削除されてものの、検討が続けられている「裁量労働制」の適用拡大。その先には、改正民法で短期消滅時効廃止の施行は2020年に予定され、これに合わせた賃金や有給休暇請求権事項見直しの行方。考えるうちに酔いが覚める。優先順位を付けての取組と腹をくくり、儘よと正月休みを満喫。
(寝正月)

東基連会報‗編集後記【平成30年12月号】

芸能人が俳句、生け花、料理、水彩画などに挑戦し、作者が意図するところを表現するにはどの様な手を加えたら出来映えの良い作品になるか、それぞれの作品にその道の大家が専門家の立場からコメントを加え、作品(作者?)を評価するというテレビ番組が好評のようで、家内につられて視る機会が多くなった。特に「俳句」は人気があるようで、的確な修正によって作品がこうも変わるのかと感心する。一方で、作品に仕上げるまでの推敲の過程は簡略であり、視聴者にその作品を鑑賞させる間はなく、「才能あり」「凡人」「才能無し」の評価も作者の人格を一面的に評価しているようで、違和感も少なからずある。出演者はタレントであり、所詮テレビのバラエティといえばそれまでかもしれないが、「俳句」を詠むには時の流れに身を委ね、己の感性が捉えた様々な事象を昇華していく作業であり、鑑賞する側も、同様の過程を追いながらその境地を汲むものかと思う。限られた番組の時間に納めるために削り落とされた部分は、私達の日常の生活からも同じように削られ、仕事と私生活を、いつの間にか同じテンポで過ごすようになってはいないだろうか。私の母は、晩年、短歌を詠むことを唯一の楽しみにしていた。その一首は時を超えて在りし日に誘う。
「単身赴任せしと告げし子の任地 酒田というを地図にて捜す」
(浜千鳥)

東基連会報‗編集後記【平成30年11月号】

平成29年「国民健康・栄養調査」の結果が9月11日に厚生労働省から発表された。調査によると、40~49歳の年齢層では、「1日の平均睡眠時間」が「6時間未満」と回答した男性は48.5%(総数36.1%)、女性は52.4%(同42.1%)、「睡眠で休養が十分にとれていない者の割合」は男女計30.9%(同20.2%)となっており、年齢階層別で最悪。加えて「朝食の欠食率」は、さすがに20歳代には及ばないものの、これに次いで男性25.8%(総数15.0%)、女性15.3%(同10.2%)と、こちらも芳しくない。「健康日本21」を運営する公益財団法人健康・体力づくり事業財団のサイトには、「睡眠不足は、疲労感をもたらし、情緒を不安定にし、適切な判断力を鈍らせるなど、生活の質に大きく影響する。また、こころの病気の一症状としてあらわれることが多いことにも注意が必要である。近年では睡眠障害は高血圧や糖尿病の悪化要因として注目されているとともに、事故の背景に睡眠不足があることが多いことなどから社会的問題としても認識されてきている。」とある。調査の対象が労働者だけに限られたものではないとはいえ、一家を支え、我が国を支える働き盛りの40歳代のこの状況を看過するわけにはいかないのではないか。良質な睡眠は、健康を守るためのはじめの一歩であり、効率的で安全に仕事を進める上でも欠かせないことを改めて認識したい。
(時告鳥)

東基連会報‗編集後記【平成30年10月号】

働き方改革関連法のうち、高度プロフェッショナル制度を除く改正労基法関係の省令、指針が9月7日付けで示されました。(株)帝国データバンクが行った「働き方改革に対する企業の意識調査」(2018.9.14付け発表)によると、働き方改革に「取り組んでいる」が37.5%、「現在は取り組んでいないが、今後取り組む予定」が25.6%となっており、省令や指針が示され、取組に必要な情報がそろったところで、来年4月1日の施行に向け、「予定」としていた企業においても取組に弾みがつくものと想定されます。同調査によれば、取組の具体的内容については「長時間労働の是正」79.8%、「休日取得の推進」61.8%となっており、特別条項では時間外労働と休日労働が混在し、有給休暇の取得義務化も基準日が統一されていない場合には管理が極めて煩雑になることを考えると、東京労働局から「東京働き方改革推進支援センター」事業を受託・運営している当連合会としては、各企業の行動が概ね理にかなった方向に動いていることに安堵しています。これからは、働き方改革に「取り組む予定はない」とする15.1%の企業の方々に、如何に取組の必要性を理解いただくか、施行までの時間は限られており、知恵を絞り、足を運んでの活動になりそうです。
(間投詞)

東基連会報‗編集後記【平成30年9月号】

本号掲載の「平成29年度における過労死等の労災補償状況(東京労働局分)について」によれば、精神障害事案のうち業務上として支給決定されたのは108件で前年比19件の増。うち自殺事案は22件で12件の増となっている。厚生労働省が発表した同補償状況によれば、出来事別では「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が支給決定事案の17.4%(自殺では12.2%)で最多。同様本号掲載の「個別労働紛争の解決制度に関する施行状況」でも、いじめ・嫌がらせに関する相談が5年連続トップとあり、職場への蔓延が危惧される。厚生労働省でも本年3月、「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書を取りまとめ、労働政策審議会での議論・検討を経て所要の措置を講ずるとされており、早期の対応が望まれる。福井県東尋坊でパトロールを続ける元警察署副署長茂幸雄氏の記事(朝日新聞30.7.22朝刊)に「最近は、職場のパワハラで追い詰められた人が多いね。本人は『ごめんなさい』というんだ。でも、本人は悪くない。悪いのは職場の上司や、周りの人たちだ。」「職場から思いやり、愛が消えたね」とある。現場の声が耳に残る。
(百日紅)

東基連会報‗編集後記【平成30年8月号】

6月1日、最高裁は「ハマキョウレックス事件」と「長澤運輸事件」に対する判決で、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違について判断を示しました。先日参加した水町勇一郎東京大学教授のセミナーで、マスコミでは触れられていない重要な留意点を教えてもらいました。ポイントは2点。1点目は、この判決は、現行の「労働契約法第20条」に係る解釈を示したものであること。同条文は、今国会で成立した働き方改革関連法において削除され、パート・有期労働法第8条に新設される条文。この条文新設に伴って「同一労働同一賃金ガイドライン」が示されることになるが、今訴訟を提起されれば、この判決に沿った判断がなされる可能性が大きく、有期・無期労働者間における手当の相違についての見直しは喫緊の課題であること。2点目は、労基法第115条に基づく賃金債権(退職金は除く)の時効は2年であるけれど、不法行為に基づく損害賠償債権の時効は3年であること。遡及支払の期間の相違にも留意が必要とのこと。
改正民法(平成29年6月2日公布)では、賃金債権に係る1年の短期消滅時効は廃止され、5年の一般債権となる。昨年12月から「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」で議論が開始されました。労基法第115条の対象となる請求権は有給休暇や労災補償なども含み、行方に目が離せません。
(風見鶏)

東基連会報‗編集後記【平成30年7月号】

去る6月1日に厚生労働省が「平成29年人口動態統計」を発表しました。平成29年に生まれた子供の数は前年より3万人余り少ない94万6千人と過去最少、合計特殊出生率は2年連続の低下で1.43、東京ではさらに低い1.21になったとのこと。専門家の言やマスコミの解説によれば、仕事と育児の両立支援が追いつかずとある。「平成29 年度雇用均等基本調査(速報版)」によれば、育児休業取得者の割合は、女性は83.2%、男性は5.14%。昨年当連合会が開催した村木厚子元厚生労働事務次官の講演で「私が職場にいた頃、女性が結婚したら「それはおめでとう」、「子供はいつ生まれるの」、「育休いつまで取る?保育所見つかった?」このくらい知っているのは常識、さらに「お父さん、お母さんどこに住んでるの?」、「近くにいる?手伝ってくれる?」、「旦那さん何してる人?」と必ず聞きます。私の部下に子供ができたとき「子供が熱を出したので遅れます」とか「保育所に迎えに行くので帰ります」など、部下が育休を取ることを本当に覚悟できていたのかというと、どこかで甘かったと思います。つまり、男性が子育てに関わっていくのには職場とものすごく戦っていかなければなりません。厚生労働省にしてこの状況なので、一般の民間企業では非常に厳しい。」と話されたのを思い出す。「働き方改革」、法律に魂を入れるのは、法案を通すより難しい。
(紫陽花)

東基連会報‗編集後記【平成30年5月号】

レスリング女子の伊調馨選手がパワハラ行為を受けたとされる問題は、日本レスリング協会が調査を委託した第三者の弁護士らによる調査の結果、パワハラ行為が認められるとの報告書が公表され、4月6日に開催された臨時理事会において「強化本部長の交代」のほか、報告書で提言された「選手とコーチとの間のルール作り」「セクハラ、パワハラに関する研修会の実施」などが提案、承認され、峠を一つ越えた。出席した理事等からは「私の感性からすると、これがパワーハラスメントかとあらためて認識」「わらわれの時代のパワーハラスメントの概念と今の概念は違う」などの感想と反省が述べられたとのこと。
一方、3月30日に厚生労働省から公表された「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」報告書でも、「パワーハラスメントは業務上の適正な指導との境界線が明確ではないため構成要件の明確化が難しく、構成要件を明確にしようとすると制裁の対象となる行為の範囲が限定されてしまう」などの指摘があり、議論、検討の場を労働政策審議会に持ち越した。平成28年度に労災保険で支給決定された精神障害事案は498件。うち、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ又は暴行を受けた」事案は74件で最多となっている。各側のパワーハラスメントへの認識の隔たりは大きいが、喫緊の課題であることへの認識は共有したい。

東基連会報‗編集後記【平成30年4月号】

3月1日から大学卒用予定者の選考採用に係る広報活動が解禁となり、各地で会社説明会が開催されたとのこと。春の訪れを前に、10月1日の正式な採用内定に向けて就活は本番を迎えることになる。とはいえ、これは経団連が示す「選考採用に関する指針」でのスケジュール。経団連非加盟の上場企業や外資系の企業などでは大学3年の10月頃から選考活動が始まり、大学3年の11月頃には内定者が出るとのこと。経団連加盟の企業でも、「内々定」という正式ではない採用内定を出しているとも聞く。
楽天が運営する就活情報サイト「楽天 みん就」が募集した「就活川柳」、今年の大賞は「わがES 人工知能に 祈られる」に決まったとのこと。最近は、提出されたエントリーシート(ES)を人工知能(AI)を使って選考する企業が増えているとのこと。不採用の通知の末尾には「今後のご健闘をお祈りします」の一文が添えられており、大賞の作品はこれを詠んだとのこと。一方、「売り手市場」となった今年の各社の売りは「ホワイト企業」。「就活川柳」では「夜に鳴る 電話で残業 想像し」とある。上手の手から水が漏れたか。特別賞に選ばれた「電車賃 無言でくれた 父の愛」を読んで、息苦しい就活の中に人の温もり感じたのは私一人ではないと思うのですが、いかがでしょうか。
(春時雨)

東基連会報‗編集後記【平成30年3月号】

自殺者は減少してきたとはいえ、毎年2万人を超え、自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は平成27年では18.9と先進諸国に比べると異常事態のそしりを免れない。(仏15.1(2013)、米13.4(2014)、独12.6(2014)、加11.3(2012)、英7.5(2013)、伊7.2(2012))本号に掲載した「自殺対策強化月間」、座間市で発生した猟奇的な殺人事件を受けて1項設け、その対策の遂行を宣言しているのは注目すべきことと思う。自殺を防止する対策は要綱に網羅されているが、自殺した以後はどうだろうか。全国自死遺族連絡会のホームページには「一人暮らしの娘がアパートで自死。焼き場に不動産業者が押しかけてきて、5年分の家賃補償(600万円)と改修費(200万円)を請求された。」「息子が夜中に縊死。救急病院へ駆けつけた遺族に、死体検案料13万7000円を即金払いで請求。支払わなければ、遺体の引き取りはできないといわれる。」といった事例が紹介されている。愛する家族を喪い呆然としているところに、こうした非情な仕打ちを受けていることも知っておく必要がある。自殺を巡って、こうした多様な側面があることを承知しているのといないのでは、その前段となるいじめや嫌がらせ、過重労働の防止への取組も自ずと熱の入れ方が違ってくるのではないか。自殺した本人や遺族の周りで何が起きているのか、今一度向き合ってみたい。
(雪割草)

東基連会報‗編集後記【平成30年2月号】

安倍総理が年頭の記者会見で「働き方改革国会」と命名した第196回通常国会が招集されました。「長時間労働の上限規制を導入し、長時間労働の慣行を断ち切る。70年に及ぶ労働基準法の歴史において、正に歴史的な大改革に挑戦する」と、その意気込みが語られ、「ワーク・ライフ・バランスの確保」にも言及しました。今国会に提出される予定の「働き方改革関連法案」の中には、平成27年4月に国会へ提出された「労働基準法等の一部を改正する法律案」も含まれ、ワーク・ライフのライフの充実を図ることを目的として「10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならない」こととなります。さて、強制的に取らされた?有給休暇。家にゴロゴロしていれば邪魔にされる世の亭主族、どのように過ごすのでしょうか。「働き方改革」と表裏一体の関係にある「休み方改革」?について、働くもの一人ひとりが見直ししなければならなくなります。働き方改革で問われるのは企業だけではなく、働く側が会社人間から脱皮し、一人の人間として人生を実りあるものにするために、家族とともに過ごすこと、地域社会に貢献すること、趣味を充実させることなど日々の過ごし方をどう変えるのか、という視点がなければ真の改革にはならない、といっては言い過ぎでしょうか。
(老婆心)

東基連会報‗編集後記【平成30年1月号】

今年の干支は戌。株式相場では「辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)つまずき、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる」などと言われているそうだが、はたしてどうなることか。それはともかく、戌といえば犬。我が家にも10歳になる犬がおり、傍らにいる妻への不満など、面と向かっては言い出しかねるようなことを愛犬にささやいては憂さを晴らす。夫婦二人の生活には欠くことのできない家族となっている。猟犬、警察犬、盲導犬、介助犬。人間と犬との歴史は長く、その特性を活かして様々な場面で私達を支えていてくれる。私たち夫婦にとっては、さしずめセラピードッグか。
(一財)国際セラピードッグ協会のホームページを見ると、犬種を問わないことや保護犬、特に殺処分寸前で保護され、訓練を受けてセラピードッグとなった例が多く紹介されている。人間関係が殺伐としてきているといわれて久しいが、介護施設や病院で高齢者や子供たちとふれあう犬たちを見ていると心が和む。職場の人間関係も悪化の一途をたどり、ハラスメントに係る相談はうなぎ登り。職場にも雰囲気を和ませるセラピードッグがいたらと思うが、叶わぬ夢か。
(初夢枕)

東基連会報‗編集後記【平成29年12月号】

今から40年近く前、まだ監督官として駆け出しの頃、秋の収穫を終えた農家の働き手が「出稼ぎ」に出て行く光景を、この頃になるとよく見かけました。第1次産業である農業から、第2次産業である製造業、建設業へと働きを変え、これが産業を支える調整弁になっていたのでしょう。そうした折、大手自動車メーカーが期間従業員の無契約期間を延長し、労働契約法に定める無期転換の適用を回避することができる雇用契約に改めたとの報道がありました(朝日新聞29.11.4)。加藤厚生労働大臣は記者会見で「都道府県労働局に実態把握をするように既に指示」「今回の無期転換ルールの趣旨を踏まえて適切に対応していくということが必要」と回答したとのこと。雇用の安定を期して改正された労働契約法第18条。そして今、国会提出には至っていないものの、非正規労働者の処遇改善を盛り込んだ働き方改革関連法案。その関連やポイントについては本紙「『働き方改革実行計画』を読み解く~開催される」にも記載したところです。非正規労働者の処遇改善に向けた政府の取組の本気度が試されると言っては言い過ぎでしょうか。流行語大賞2017候補30語の20位に「働き方改革」がノミネートされたとのこと。水町先生の熱い語り口を思うまでもなく、「働き方改革」を単に流行語で終わらせるにはいかないと思うのですが・・
(望遠鏡)

東基連会報‗編集後記【平成29年11月号】

秋の臨時国会で審議が予定されていた「働き方改革」は、開会冒頭での解散で先送りとなりました。一方、過重労働問題を国民的課題へと認識させる原動力となった電通事件は、社会的な影響を配慮して略式起訴から東京簡易裁判所での公判へと審理の場を移し、法人に対して罰金50万円の判決を言い渡し結審しました。裁判官は「業績との兼ね合いで働き方改革がきちんと遂行されるか疑問に思う方もいるだろう。日本、そして業界を代表する企業として立場に相応した社会的役割を果たしてもらいたい」と説諭したとのこと。新国立競技場建設に関わっていた建設会社の現場監督が失踪後自殺、新潟市民病院の研修医が過労自殺、NHK記者の過労死が発表されるなど、日本を代表する職場で起きたこうした事件は労働の現場で起きている事態の深刻さ、根深さを象徴しており、判示された説諭が重く響きます。「平成29年版 過労死等防止対策白書」では『労働時間を正確に把握すること』及び『残業手当を全額支給すること』が、「残業時間の減少」、「年休取得日数の増加」、「メンタ ルヘルスの状態の良好化」に資すると分析。方や、本紙で紹介した「平成28年就労条件総合調査」で「有給休暇の取得率」は48.7%、紐解くに平成7年には55.2%。本紙が届くころは国会の陣容も定まっているでしょう。「働き方改革」の議論が一層深まることを強く願うばかりです。
(風来坊)