東基連会報‗編集後記【平成29年2月号】

旧聞に属する話になりますが、昨年末の大手広告代理店に続き、本年1月には神奈川労働局が大手電機メーカーを過重労働により精神障害を発症したことを端緒として書類送検しました。いずれも労働基準法第36条に基づく労使協定(通称「36協定」)で定めた時間外労働の上限を超えて労働させたというものですが、平成26年に被疑条文である労働基準法第32条で送検したのは39件(労働基準監督年報)、一方、平成26年度に精神障害で業務上と認められた事案は497件あり、うち時間外労働時間数(1か月平均)が100時間以上の事案は174件、160時間以上というのが67件、精神障害事案のうち自殺事案は99件で、同様に100時間以上の事案は50件、160時間以上が26件もあり、おそらくこれらの事案は36協定を超えて労働していたことが疑われます。36協定を超えて労働させただけであれば形式犯ですむかもしれませんが、労働時間が精神障害や脳・心臓疾患発症に強い因果関係を持つとされ、業務上外の主要な判断要素であることから、36協定を超えて労働させたことによって自殺や精神障害という被害が現実のものとなれば、長時間労働を原因とする明らかな労働災害。マスコミが関心を持つ大手ばかりではなくとも、こうした労働災害を発生させた事業場に司法処分がなされるケースが増えてくるように思われますが、行政当局や如何に…
(風見鶏)