東基連会報‗編集後記【平成29年7月号】

個人タクシーを営む高山邦男さんが出版した歌集「インソムニア」が日本歌人クラブ新人賞と、ながらみ書房出版賞を受賞したとの新聞報道(平成29年5月15日、朝日新聞朝刊)があり、詠まれた歌が紹介されていました。
縁ありて品川駅まで客とゆく
第一京浜夜景となりて
わが仕事この酔ひし人を安全に
送り届けて忘れられること
何時間続けるのだらう歩行者を
誘導してゐる娘明るし
乗車した客や車窓越しにふと眼にとまった働く人の様を謳った歌には、被写体となった人への限りない優しい思いやりとどこまでも控えめな詠み人を感じます。平成3年4月から2年余りをかけて建設された福岡ドームの職長会が工事関係者の手記や歌などを取りまとめた文集「童夢」には
中一の我娘のセーラー服姿
二ヶ月遅れて見る我れ悲し
洗わずにそのまま吊るす黒シャツの
汗の塩地図幽かなりけり
という歌が載っています。いずれにも働く人の優しいまなざしを感じるのですが、いかがでしょう。
(金糸雀)