東基連会報‗編集後記【平成29年11月号】

秋の臨時国会で審議が予定されていた「働き方改革」は、開会冒頭での解散で先送りとなりました。一方、過重労働問題を国民的課題へと認識させる原動力となった電通事件は、社会的な影響を配慮して略式起訴から東京簡易裁判所での公判へと審理の場を移し、法人に対して罰金50万円の判決を言い渡し結審しました。裁判官は「業績との兼ね合いで働き方改革がきちんと遂行されるか疑問に思う方もいるだろう。日本、そして業界を代表する企業として立場に相応した社会的役割を果たしてもらいたい」と説諭したとのこと。新国立競技場建設に関わっていた建設会社の現場監督が失踪後自殺、新潟市民病院の研修医が過労自殺、NHK記者の過労死が発表されるなど、日本を代表する職場で起きたこうした事件は労働の現場で起きている事態の深刻さ、根深さを象徴しており、判示された説諭が重く響きます。「平成29年版 過労死等防止対策白書」では『労働時間を正確に把握すること』及び『残業手当を全額支給すること』が、「残業時間の減少」、「年休取得日数の増加」、「メンタ ルヘルスの状態の良好化」に資すると分析。方や、本紙で紹介した「平成28年就労条件総合調査」で「有給休暇の取得率」は48.7%、紐解くに平成7年には55.2%。本紙が届くころは国会の陣容も定まっているでしょう。「働き方改革」の議論が一層深まることを強く願うばかりです。
(風来坊)