東基連会報‗編集後記【平成30年8月号】

6月1日、最高裁は「ハマキョウレックス事件」と「長澤運輸事件」に対する判決で、有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違について判断を示しました。先日参加した水町勇一郎東京大学教授のセミナーで、マスコミでは触れられていない重要な留意点を教えてもらいました。ポイントは2点。1点目は、この判決は、現行の「労働契約法第20条」に係る解釈を示したものであること。同条文は、今国会で成立した働き方改革関連法において削除され、パート・有期労働法第8条に新設される条文。この条文新設に伴って「同一労働同一賃金ガイドライン」が示されることになるが、今訴訟を提起されれば、この判決に沿った判断がなされる可能性が大きく、有期・無期労働者間における手当の相違についての見直しは喫緊の課題であること。2点目は、労基法第115条に基づく賃金債権(退職金は除く)の時効は2年であるけれど、不法行為に基づく損害賠償債権の時効は3年であること。遡及支払の期間の相違にも留意が必要とのこと。
改正民法(平成29年6月2日公布)では、賃金債権に係る1年の短期消滅時効は廃止され、5年の一般債権となる。昨年12月から「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」で議論が開始されました。労基法第115条の対象となる請求権は有給休暇や労災補償なども含み、行方に目が離せません。
(風見鶏)