東基連会報‗編集後記【平成31年4月号】

東京労働局では、今会報「行政の窓から」にあるように、これから社会に出て働く若者が、労働契約法や労働基準法など働くルールの理解を深めることを目的に、大学や高校、専門学校で行うセミナーや講義に職員を派遣し、機会均等・キャリア教育の充実を図る活動を展開している。
一方3月に入り就職活動が本格化し、各地で会社説明会が開催されている。ニュース情報では、最近の就活は様変わりしてきているらしい。入社試験や面接での出題傾向が変わったという。例えば「東京オリンピック・パラリンピックでの開催は、社会や経済にどのような影響や課題があるか、あなたの考えを述べてください」えっ!正解は?今就活の現場ではこのように、“正解の無い時事問題”で学生に単なる知識を求めるのではなく、本人の考えや資質を測ろうとする企業が増えているという。情報が簡単に手に入り、AIで素早く処理できるようになってきている昨今、人間にはこれまで以上に“正解の無い課題”について考える力が求められている。
2019年に卒業予定の学生から募集した「就活川柳」最優秀賞は、「不合格 心もSuicaもチャージ切れ」定期外の区間へと何度も足を運び、会社の説明会や面接に何回も参加してから不合格の通知をもらうと、心にもSuicaにもチャージがなくなり萎えてしまうのだろう。売り手市場とはいえ、社会の変化に対応する若者にエールを送りたい。

4月に入り、一目で新入社員とわかる若者の姿を多く見かけるようになった。いわゆる就活の開始時期を巡っては、昨年、様々な議論があったが、(株)ディスコが本年2月に発表した「2020年卒・新卒採用に関する企業調査―採用方針調査」結果によれば、2020年3月卒業予定者の採用見込みは、前年よりも「増加」(28.0%)、「減少」(7.9%)となり、9年連続で「増加」が「減少」を上回り、採用活動のスタンスは、「学生の質より人数の確保を優先」が25.2%と、今年も4社に1社が「質より量」を優先するとのこと。先の議論が何を目的にしたものか、透けて見える、といっては言い過ぎか。1978年、オイルショック後の就職氷河期に就職した我が身に照らせば隔世の感がある。新入社員の教育はこれからが本番。「質より量」に走って採用した人材は玉石混淆だろう。採用に当たった担当者の目が確かかも問われるが、人が持つ隠れた才能を見出し、企業が必要とする人材に育て上げる技量もまた試される。才能はすぐに開花するとも限らない。採用者の「量」を確保するためのコストやエネルギーより、人を育てることの方が、それぞれの新入社員の人生そのものを左右することを考えれば、遙かに慎重であるべきだし、高いコストやエネルギーを要すると考えるのは、筆者だけではないだろう。評価の定まった在職社員の人事異動もこの時期。新たな業務に就く方も、新たな任地に赴く方も、幸い多き門出になることを祈ってやまない。
(鬼軍曹)